おいしい食卓を囲むことは、歓びの根本であり素敵なことです。誰かのために料理することは、心をかけたり愛することの表れです。食べものは日々の健康と元気をつくり、また、繊細な感覚を刺激してくれます。このことが、彼女の料理家とフードライターとしての真髄です。具体的には、実用的な料理とそれを伝える本を書くこと、世代を問わず誰もが料理することや、手に入る食べものを様々なやり方で楽しむことを学べるような本です。
よい食べものは、正直でなければなりません。だから食材は常に、味と加工法で選びます。人は、健康のためや、世界を救うためだけに食べるのではありませんが、そうしたことが同時に叶うのであれば一番よいからです。
80年代中頃、コペンハーゲンのトップレベルのレストラン数軒で一流の調理技術や季節の食材を学び、その経験が仕事の基礎になっています。その後栄養学とコミュニケーションで学位を取り、さらにで健康的な料理、シンプルでおいしい家庭料理へ進化しました。
油脂が多く、野菜や精製度の低い食材の少ない料理、脈絡のない飾り立てた料理など、質の悪い外食ではなく、正直な食べもの、つまり小規模生産者の名がわかる食材でつくる料理を作っています。レストラン取材においても、シェフの情熱を感じることができる味の世界を取り上げます。
彼女は消えゆく郷土料理に特に力を注ぎ、例えばデンマークの伝統料理、スモールブロ(ライ麦パンのオープンサンド)の著書があります。郷土料理は博物館入りするのではなく、敬意を持って扱われ、時代に合わせて刷新され、現代の食卓に生き生きと残るべきものです。これらの視点から、彼女は2009年?2015年にスローフード・コペンハーゲンでコンヴィヴィウムリーダーを、現在はスローフード協会国際会議のノルディック地区代表を務めています。
カトリーヌ・クリンケン(スローフードコペンハーゲンリーダー)
料理講師・フードライター。スローフード国際協会ノルディック地区代表。栄養学および家政学修士、コペンハーゲンワインアカデミー認定シェフ・ソムリエ。
美食の新潮流レストランで研修した食材知識と技術を生かし、伝統食と小規模生産者を重視するスローフードの視点を、シンプルで健やかな家庭料理の本に込める。また、地域産の食材や精製度の低い食材を用いる、情熱あるレストランの刺激的な味覚体験、ストリートフードなどをレポートする。「スモールブロ ?デンマーク式オープンサンド」(2007年)ほか家庭料理の著書多数。