報告:青木 誠雄
開会式に引き続き、北海道立総合研究機構理事長 丹保憲仁さんによる基調講演が行われました。
北海道の人口は、私が生まれた1933年当時300万人だったのが、現在では550万人になって、また減ろうとしている。アジアの人口は2050年で
ピークを迎え、以降、減少に向かう。 世界は大きくなり過ぎ、これ以上、人口が増える訳にはいかないが、人口が減ったときにどう暮らせばよいか。
その一つの方法が集村であり、北海道のような散村では暮らしていけない。もう一つは、都市が形成されて近代になったが、東京と東京でない日本、札幌と札幌でない北海道を意識して、行動していかないと生きてはいけない。 2050年には次の時代が始まり、2100年にはエネルギーがなくなり、物質は小さく循環し、情報は広がる。 道内には、食の基盤となる土地と水は豊富にあるが、エネルギーがない。 それぞれの地域が自立しながら、ネットワーク化する必要がある。 札幌は東京に作ってもらった都市で、これまで中央政府に相談してばかりだったが、21世紀後半は、東京に相談する必要はないところまで、成長しなければいけない。 地方の中・小都市がばらけていては発展できず、核となる産業があり、教育があることが重要である。 農漁村を集村化して連結し、大企業のような分業ではなく、お互いが半分ずつ力を出し合う協業を目指さなければならない。
自立を獲得するには、「協業=分業+X」に、社会や働き方、集落の構造を変える必要がある。 生産施設を集約化し、インフラの充実強化を図り、高学歴・高能力の人材を確保し、ITデバイドを解消する。 専門性を持った農家・漁家の自立能力の向上が絶対必要である。農産物をベースとしたバイオコンビナートを形成することがでれば、北海道の人口はリバウンドする。散村から集村、そして「聚村化」する。聚とは、議論してまとまりを作っていくことであり、生活者全員が知恵を出し合って、役割を分担し合って、コンパクトな中心集落を構成する。
「安全」は努力で確保できるが、「安心」は誰も保証できない。 自然エネルギーに、今から投資をしていっても、次の時代には人口を減らす必要がある。 成長や進歩の時代は過ぎ、環境のことを考えなければ何もできない時代になる。 北海道は、科学技術や食文化が未熟であり、一応の食料供給力はあるが、イニシアティブがない。
安定平衡に達したヨーロッパに対し、近代を最初に卒業する日本が、22世紀のデファクト・スタンダードを作れるかが重要である。世界人口は100億人となって、近代が終わる。 後期近代は集まって支え合い、それをバックアップする都市の存在が重要である。
地球は食料、エネルギー、水の制約から、大成長には耐えられない。 人口と消費は削減されなければならず、未来のために教育が根底から変わらなければならない。 成長から持続的進化へ、「価値の創造」こそが価値である社会となることが、北海道の最大の目標である。