報告:嶋田 直美
映画「千年の一滴 だし しょうゆ」(監督:柴田昌平)は、日本人と自然との関係を、食を切り口に見つめるドキュメンタリー映画。 圧倒的な映像で見るものを惹きつける映画は2章からなり、第1章では、「だし」について、漁師・農家・禅寺・料亭・科学者など「だし」をめぐる人々の営みを追い、第2章では「しょうゆ」をはじめとする和食の“うまみ”がつまった調味料(しょうゆ・さけ・みりん・みそ)について、千年にわたって磨かれた職人たちの知恵と、麹カビによる和食創世のドラマを浮かび上がらせた。
パネルディスカッションでは、昆布生産者の高橋祐之さん、鰹節生産者の芦沢安久さん、発酵研究家のなかじ(南智征)さんを迎え、だしや発酵にまつわる今とこれからについて話をいただいた。 だしも発酵食品も、本物を食べる人が減っていて、それに伴って伝統的な製法を続けることが難しくなってきている。 生産者は、ただ伝統を守るだけでなく、お手軽に使える商品や気軽な使い方を入り口にして、本物を作り伝える努力を続けなくてはいけない。 そして、伝統を守る、伝えるとなると敷居が高くなるので、消費者は、おいしい、匂いが良いという感性の切り口で、だしや発酵食品を生活に取り入れてほしい。 3人は、住む場所も立場も違うが、話は不思議とらせんのように絡みながら同じ方向に進んでいった。 まずは、家庭に一台鰹節の削り器を置くところから始めてみたい。